■2022年9月11日 第6回 たまねぎ 〜 講演「たまねぎの生産と流通について」 ホクレン農業協同組合連合会 東京支店 青果課 田中友二氏
◇はじめに
  • 「つくる人を幸せに、食べる人を笑顔に」。これがホクレンのコーポレートメッセージです。

  • 生産基盤の維持・強化のため、「販売事業」「購買事業」「営農支援」を三位一体で行っています。

  • ホクレン東京支店青果課は販売事業を担う部門で、本日はその販売に関わる内容をご紹介させていただきます。

  • 販売事業というのは、北海道の生産者が作った青果物を農協が集荷し、農協からわれわれホクレンが青果物をお預かりし、全国にその青果物を販売する事業です。青果物のほか、米、肉、牛乳、砂糖なども販売しています。

  • 今回は「たまねぎ」について、産地情勢や消費動向、ホクレンの取り組み、さらに番外編として北海道のたまねぎがみなさんの元に届くまでの流れをご説明します。

ホクレン農業協同組合連合会
東京支店 青果課
田中友二氏

◇たまねぎの産地情勢
  • 1975年から2019年までの日本全国のたまねぎ作付産地構成を見ると、北海道は右肩上がりに生産量が伸びています。1975年の北海道の作付面積は27%で、主産地ではありませんでした。現在は56%を占めるたまねぎの一大産地になっています。

  • 過去、たびたび起きた「産地廃棄」は、需要量と供給量のミスマッチによるものです。市況が大低迷し、再生産価格が取れないと、生産者が困ります。需給のバランスを図るためにもやむを得ず産地廃棄をすすめてきましたが、2003年以降は産地廃棄することなく販売できています。

  • 2021年はたまねぎが不作で、みなさんには多大なご迷惑をおかけしてしまいましたが、主産地として全国の消費者にしっかりとたまねぎを供給していくのがホクレンの責務だと感じています。
◇たまねぎの消費動向
  • 国内で消費される野菜全般の用途別割合の変化によると、1980年に28%あった家庭での消費は、2011年には16%に減っています。逆に、外食は27%から33%に、加工品は43.9%から50%以上に増加。内食が減り、外食が増えたことを示しています。卸売市場経由率も低下しています。こうした消費実態から、加工用、外食向けの供給体制を整えていくことが課題だと認識しています。

  • たまねぎの国内消費量は、年間約130万トンです。そのうち、北海道産が約70万トン、府県産が約30万トン、輸入(主に中国産)が約30万トンとなっています。

  • 輸入品は、主に外食や加工品に使用されています。2021年は北海道産が不作で、一部、タスマニア産やニュージーランド産がスーパーに並びましたが、基本的に輸入品が並ぶことは少ないですし、中国産はまずありません。意識していない方も多いと思いますが、外食や加工品外では意外と食べているというのが実態です。

  • 府県産のたまねぎは面積が減少してきており、北海道としては、加工向け、生食向け、双方の供給量を拡大しています。

  • 消費動向に合わせて、加工向けや生食向けの供給量を拡大することにより、府県産の減少をカバーしつつ、輸入抑制につなげ、安心・安全な国産をお届けしたい。
◇ホクレンの取り組み
  • 北海道内の地域別出荷は北見地区を中心に、旭川、岩見沢などから多く出荷しています。

  • たまねぎの年間出荷推移は、4月末くらいまでは出荷、6〜7月はほぼ出ておらず、8月から出荷が始まり、9〜11月は集中します。年間を通じて平準出荷を行うよう各種対策(=山崩し対策)を講じています。

  • たまねぎの収穫は7月下旬から9月いっぱい。北海道は12月には雪が降りますから、倉庫に入れないと凍ってしまいます。この倉庫に入らない分をどうするかが課題です。

  • 出荷の集中をクリアするためにしていることは三つあります。まず、早出対策。できるだけ収穫を早めて、7〜8月から出荷する体制。もうひとつが、輸出対策。9〜10月の大量な収穫を、台湾を中心に韓国などにも輸出しています。さらに、消費地保管や産地保管。内地の倉庫をお借りして、しばらく入れておき、国内の流通量を調整する対策です。こうして隔離したものを5〜7月に出荷し、安定的に一年間を通じてたまねぎを供給する体制を整える。こうして弱点を強みに変えながら行っている戦略を、われわれは「山崩し対策」と呼んでいます。

  • 府県産の減少時期は北海道の販売期間を延長して出荷の集中時期を平準化し、加工用たまねぎは供給を拡大して中国産の輸入を抑え、安心・安全な国産たまねぎをお届けしています。
◇北海道のたまねぎが届くまで
  • 2月、ハウスの中で育苗をします。この時期、農家さんが一番心配するのは雪で、ハウスが雪の重みでつぶれないように、朝から晩まで雪よけをする。これが主な仕事のひとつになります。

  • 4月ぐらいまでハウスで育苗し、4月下旬〜5月上旬に畑に移植します。7月〜8月の早出し出荷のために雪解けとともに早めに移植作業を開始しています。

  • 6月に、中耕・除草・かん水。この時期に干ばつになり水が不足すると、不作になります。北海道は栽培面積56%の大産地として、たまねぎをしっかり供給する責任があります。そこで、一部の産地ではリールマシンで散水作業を行い、天候に負けないたまねぎづくりを進めています。

  • 7月には根切りをします。たまねぎは大きくなりすぎると病気になる確率が上がるので、ほどよい大きさのところで根を切るわけです。根切りには、品質維持に加え、早く仕上げて出すという意味もあります。品種ごとに根切り作業のタイミングが異なるため、それぞれの適期に合わせて行っています。

  • 収穫は早いもので7月に行い、主には8〜9月が全盛期になります。それを低温貯蔵して翌年まで供給します。北海道のたまねぎは冷蔵庫にずっと入っており、随時出して、つねに売り場に並べることができます。

  • 収穫したたまねぎは1.3トンのスチールコンテナに入れられ、選果場に投入。外側の皮を1枚むくブラッシング作業のあと、人の目で腐敗を除き、サイズ別に選別。再度、人のチェックを経て、段ボールに詰めて出荷されます。農協によっては金属探知機なども入れ、より安心・安全にお届けしています。

  • 北海道としては、長期間の安定供給を図っていきたいと考えています。今後も、たまねぎをはじめ、北海道産の青果物にご愛顧をお願いいたします。
◇質疑応答より

    Q:昨年はたまねぎが不作でしたが、今後の見通しはいかがですか?
    A:今年のたまねぎは、大きさなど非常に順調です。6月にたまねぎの主産地でひょうが降り、1万2000ヘクタールのうち500ヘクタール以上が廃耕になってしまいましたが、他は豊作でしたので、全体量として、たまねぎをお届けできなくなることはありません。

    Q:今年のたまねぎは8〜9割がL 大と聞いたのですが、2Lは出てきますか?
    A:国内向けの7〜8割はL大です。2Lは、台湾など国外向けに出荷しています。

    Q:北見、岩見沢、富良野でL大でも若干大きさが違うことがあるようです。規格はどうなっていますか?
    A:規格は全道で統一しており、本来はおおむね同じ大きさになるはずです。箱の中に違うサイズがあった場合は選別不足なので、今後、注意します。

    Q:たまねぎは保管しておくと芽が伸びてきます。産地では何か芽が出ない工夫をしているのですか?
    A:北海道ではたまねぎは冷蔵庫に入れます。スーパーで買ったら冷蔵庫に入れていただくと、芽は止まります。1〜2℃、凍らせない程度の温度で保存してください。

    Q:品種はすべて同じですか?
    A:ホクレンから品種の指定はしておらず、それぞれが作りやすい品種を選定して作っています。貯蔵性がいいとか収量性がいいなど、主力品種は絞られており、だいたい4品種ぐらいで回しています。

    Q:どの品種もF1のたまねぎで、自家採取はしていないということですよね?
    A:はい、自家採取はしていません。

    Q:海外輸出の件、国での調整などは行われているのですか?
    A:基本的に日本国内の需要量を優先しています。日本から出せる数量を海外に通達し、条件の交渉をしています。

 

【八百屋塾2022 第6回】 挨拶講演「たまねぎの生産と流通について」勉強品目「たまねぎ」商品紹介