■2022年7月24日 第4回 なす・プラム 〜 勉強品目「なす・プラム」 東京青果(株) 野菜第3事業部 佐々木弘哲氏、(株)果菜里屋 高橋芳江氏

◇「なす」について

 [東京青果(株) 野菜第3事業部 佐々木弘哲氏より]

  • 夏秋時期、市場にはどのようななすが流れているかについて、ご紹介します。

  • 「千両なす」。出荷者は、栃木県・JAはがかの真岡。市場に多く流通している一般的ななすです。13〜15センチくらいの長卵形で、果皮は非常に濃い黒紫色。果皮、果肉ともほどよいやわらかさで、煮物、焼き物、揚げ物などさまざまな料理に対応できます。タキイ種苗さんの品種です。

  • 「式部なす」は、栃木県・JAなすの。首の部分からやや太い中長なす。皮は濃い黒で、光沢に優れ、皮は薄くてやわらかいのですが、実がしっかりつまっている品種です。

  • 「筑陽」はタキイさんの品種で、20〜30センチくらいの長なす。首が太く、果肉は緻密でアクは少なめ。九州で多く栽培されています。単為結果の「PC筑陽」は主にハウスで栽培されています。

  • 大長なすは、九州中心に栽培されています。40〜60cmと非常に長い。皮はしっかりとかためですが、果肉はやわらかく、ふっくらとした弾力があります。首の部分から先まで太さにあまり差がなく、均一に火が入りやすい。焼き料理、煮物がおすすめです。本日の大長なすは、熊本県・JA鹿本から出荷。私も個人的に好きな品種です。よく家で焼きなすにして、かつおぶしとしょうゆで食べています。

  • 「折戸なす」は、静岡県・JA清水市。昔、徳川家康に献上されたという記録があります。栽培が途絶えていましたが、生産者とJA、関係者が一丸となって、古いタネから栽培を復活させたなすです。

  • 「丸なす」は、古くから関西を中心に食べられてきたものです。「賀茂なす」が筆頭。ソフトボールくらいの大きさで、皮は濃い紫色。ずっしりとしてかためのものが多く、田楽などの焼き料理がおすすめです。

  • 「泉州水なす」の原産地は大阪です。出荷者は、JA泉州中部営農センター。大阪の伝統野菜で、水分が多く含まれており、絞ると水がしたたり落ちるほど、非常にみずみずしく、アクが少ない。甘みがあり漬けものにおすすめ。生で食べられます。

  • 愛媛県、西条地区の伝統野菜「絹かわなす」。出荷者は、JAえひめ未来。米なすよりも大きくなります。ヘタは紫色で、アクが少なく、皮は薄くやわらか。果肉は甘みがあり、やわらかいのが特徴です。

  • 宮崎県の「佐土原なす」は、赤なすの一種で、非常に大きい。焼きなすにするとおいしいなすです。

  • 「ていざなす」も赤なす系統なので、九州が中心。おそらく「佐土原なす」と同じ系統でしょう。

  • 群馬県の「フェアリーテイル」。小なすの系統と米なす、白なすなどが混ざっている品種です。各産地でいろいろと呼び名がつけています。

  • 群馬県の「白なす」、「青なす」は米なす系統で、焼き、揚げなどが中心になります。加熱しても色はあまり変わらないと思います。

  • 「ゼブラ」も米なすの系統。焼きなすが一番おいしいと思います。

  • 「ひもなす」は群馬県。新潟の「鉛筆なす」と似ているかもしれません。

  • 暑い時期なので、流通の際に傷み等が発生することもあります。できるだけ温度変化が少ない状態で流通する、ということを念頭に販売しています。

  • 今回ご紹介したなす以外にも、新潟県の「十全なす」など、その地方独特のなすがたくさんあります。新潟県は、なすの種類が多く、消費量も多い。ぜひ現地で、さまざまななすを食べてみてください。
◇質疑応答より

    Q:調布で八百屋をしています。うちで扱っている福島の「くろべえなす」のいいところを教えてください。
    A:「くろべえ」は、通常に栽培されている品種のひとつで、福島のほかにも栃木など各地で作られています。耐暑性に優れています。漬け、焼きなど、使いやすく、トータルバランスに優れた品種です。

    Q:板橋で納めを専門にしています。なすは、箱との接地面とか、下のほうにへこみが出ることがあります。なぜ5キロ箱なのか、また、紙製の段ボールは劣化が早い気がするのですが、対処法はありますか?
    A:プラスチックコンテナも考えられますが、ある程度風通しのいいものでデリケートに扱わなければいけないこと。コスト面では、3キロにすると運賃が高くつく、10キロにすると1軒でそこまでの量が必要か、という問題が出てきます。このようなバランスの中で、今のところ5キロが主流になっています。今後は、違う方法も出てくるかもしれませんが、現在はガソリンの高騰で輸送費が全世界的に上がっており、産地も非常に苦慮しています。ご意見は参考にさせていただきます。

◇「プラム」について

 [(株)果菜里屋 高橋芳江氏より]

  • すももには、日本すももと西洋すももがあり、日本すももは「プラム」、西洋すももは「プルーン」と呼ばれています。

  • ふっくらとして、皮にハリがあるもの。ブルームと呼ばれる白い粉がついているもののほうが新鮮です。

  • おいしく食べるには、常温で追熟させると香りが増します。触ったときにちょっとやわらかいというくらいで食べるのがいいと思います。
(株)果菜里屋 高橋芳江氏
  • 以前、八百屋塾でくだものの話をしてくださった橋本さんがおっしゃっていたのは、買ってきたら3〜4日冷蔵庫に入れてしめるとおいしくなる。さらにおいて1週間くらい経つともっとよくなる、ということでした。

  • 栄養的には、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが含まれており、整腸作用、生活習慣病の予防に有効だといわれています。

  • すももの原産地は中国です。中国では5世紀くらいから薬用や食用として使われており、日本には奈良時代以前に伝わったといわれています。今の日本の主要品種は、大正時代にアメリカに渡って育種され、それが逆輸入されたものです。

  • 本日の商品について説明します。「ソルダム」は山梨県。アメリカ生まれの中生品種で、未熟なうちに出回るので、緑がかった紫色のすももというイメージですが、完熟するとあめ色に近づきます。強い甘み、ほどよい酸味で、食味が良い。4月から出回っているので、もう終盤。今月いっぱいで終了です。

  • 「サマーエンジェル」は、山梨県で育成された品種。果実が大きめで糖度が高く、強い酸味と調和して濃厚な味わいです。こちらも今月いっぱいで終了します。

  • 「大石早生」、今日の商品は青森県産。日本で生産量トップを誇る品種です。形は丸く、果頂が少しとがっているのが特徴です。果肉はやわらかくてジューシーで、ほどよい甘みと酸味のさわやかな味わい。そろそろ終了です。


  • 「貴陽」は中生種、大玉で世界一大きいすももとしてギネスブックに認定されています。とても甘く、適度に酸味があり、バランスの良い上品な味わいで人気のある品種です。8月初めくらいで終了です。

  • 「紅りょうぜん」は、めったに見られない品種。長野県産。早生種で、果実はやや大きめ。甘みとほどよい酸味でさわやかな味わい。果肉は緻密でやわらかく、「大石早生」が入っているので似ています。

  • 「菅野早生」は、4月下旬ころから成熟します。赤紫で、甘みと酸味のバランスがいい品種です。

  • 府中の大國魂神社では、毎年7月20日に「すもも祭り」が開催されています。スタッフの大野さんにご提供いただいた映像をのちほどご覧いただきます。東京でこのようなお祭りが開催されているのは貴重だと思うので、みなさんも機会があればぜひ来年行ってみてください。
◇「なす」「プラム」の写真
なす(埼玉)
式部なす(栃木)
筑陽なす(茨城)
大長なす・長助(熊本)
折戸なす(静岡)
賀茂なす(京都)
大和丸なす(奈良)
泉州水なす(大阪)
絹かわなす(愛媛)
佐土原なす(宮崎)
ていざなす(長野)
フェアリーテール(栃木)
白なす(新潟)
青なす(千葉)
ひもなす(群馬)
ヘタ紫(石川)
米なす(高知)
ソルダム(山梨)
サマーエンジェル(山梨)
大石(青森)
貴陽(山梨)
紅りょうぜん(長野)
靜香(長野)
 

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