■2022年8月21日 第5回 かぼちゃ  〜 勉強品目「かぼちゃ」 東京青果(株) 野菜第3部 マネージャー 鈴木剛氏、(株)果菜里屋 高橋芳江氏、伝統野菜プロジェクト 領家彰子氏

◇「かぼちゃ」について

 [東京青果(株) 野菜第3事業部 マネージャー 鈴木剛氏より]

  • 本来、今頃は北海道の道南地区の後半戦で、道央地区、道北地区に移っていくのですが、雨が多く、少し遅れが出ています。

  • 本日は、「みやこ」、「ダークホース」、「ホッコリウララ」の3種類。もっと種類があってもいい時期ですが、まだ入荷が多くない状況です。

  • 「みやこ」の産地は道南中心。生育が早く、北海道の先駆けとして出てきます。甘みが強くて、粉質感が高く、非常に人気があります。新函館森で何十年も作られており、知名度が高い商品です。

  • 「ダークホース」は苫小牧中心に作られており、ここ数年は、8月下旬から9月いっぱい、多く出回ります。早生系の品種なので、10月以降は傷みが多くなってきます。

  • 「ホッコリウララ」は、今出ているものは少し早いかもしれません。もともと冬至で販売するために作った晩生の品種です。生産者さんによって、貯蔵するより早めに出す方もいるようです。熟してから採っていますので問題はありませんが、少しおいて食べたほうがおいしいと思います。

  • 今日は3種類でしたが、本来は数十種類あります。まずはそれぞれの品種特性をよく知ることが大切です。私は長年かぼちゃを担当していますが、「品種に正解はない」と思っています。時期や場所、どういう考え方でどんな取り組みをしている産地なのかを見極めれば、おいしいかぼちゃに当たります。

  • かぼちゃの栽培は重労働です。手作業で手間もかかりますし、生産者の高齢化で、今後も栽培面積が増えることはないでしょう。みなさんがいい品種をしっかり選んでいただくと、生産維持につながると思います。かぼちゃはメキシコやニュージーランドなどからも多く入ってきていますが、これらも減少傾向にあります。日本人のかぼちゃの消費量を伸ばしていかないと、かぼちゃを食べる文化自体がなくなってしまうかもしれませんので、八百屋さんのご協力をよろしくお願いします。
◇「かぼちゃ」の写真
みやこ(北海道)
ダークホース(北海道)
ホッコリウララ(北海道)

◇「参考出品のかぼちゃ」について

 [(株)果菜里屋 高橋芳江氏より]

  • 「坊ちゃんかぼちゃ」は、先ほど講師の宮脇さんのお話にあった通り、ミニサイズで食味のいいかぼちゃです。似たようなものもありますが、「坊ちゃん」がみかどさんの品種です。

  • 「鈴かぼちゃ」は淡い緑色で、皮がやわらかく、生食できます。普通に煮ても食べられます。

  • 「コリンキー」は生でマリネやサラダに使われます。最近はレストランなどでよく見かけるようになりました。
(株)果菜里屋 高橋芳江氏
  • 「プッチーニ」はとてもきれいな色なので、中をくり抜いてグラタンの容器に利用したり、おしゃれな料理におすすめです。

  • 「バターナッツ」はよく見かけるようになりました。甘みは少なめですが、とてもなめらかで、ポタージュにするとおいしくいただけます。

  • 「おもちゃかぼちゃ」はペポかぼちゃ。基本的には食べません。インテリアやお店の飾りに使われます。

  • 「きんしうり」は「そうめんかぼちゃ」とも呼ばれます。ゆでて水の中でほぐすとそうめんのような細い繊維状になります。それをおつゆやスープに入れたりして食べます。
◇「参考出品のかぼちゃ」の写真
坊ちゃんかぼちゃ(北海道)
鈴かぼちゃ(北海道)
コリンキー(新潟)
プッチーニ(愛知)
バターナッツ(千葉)
おもちゃかぼちゃ(岡山)
金糸瓜(岡山)
   

◇「伝統野菜のかぼちゃ」について

 [伝統野菜プロジェクト 領家彰子氏より]

  • 伝統野菜のかぼちゃをご紹介します。まず、今日ここに並んでいるかぼちゃについて。「黒皮かぼちゃ」は日本かぼちゃの一種です。これは石川のものですが、本来は宮崎や熊本が代表的な産地で、「日向かぼちゃ」とも呼ばれています。もとは水田の後作として作られていたものだそうです。

  • 石川の「赤皮栗かぼちゃ」は西洋かぼちゃの一種です。

  • 東京の「内藤かぼちゃ」。高遠藩の内藤家が内藤新宿にあった下敷地内で栽培していたもので、種が残っていたのを復活させ、今、江戸東京野菜として栽培されています。
伝統野菜プロジェクト 領家彰子氏
  • 京都の「鹿ヶ谷かぼちゃ」。変わった形をしていますが、もとはよくある扁平な形のかぼちゃを栽培していたら、このようなものができて、それが今に伝えられているといわれています。

  • 岐阜の「宿儺(すくな)かぼちゃ」。飛騨高山の特産で、西洋かぼちゃの一種です。

  • これらのほかにも、私たち「伝統野菜プロジェクト」では、これまでに各県からさまざまな伝統野菜のかぼちゃを取り寄せました。先ほどのお話によると、国産のかぼちゃの多くが北海道で栽培されている、とのことでしたが、伝統野菜のかぼちゃは北海道にはほとんどありません。開拓時代からの「まさかりかぼちゃ」があると聞いていますが、今栽培されているものの多くは品種改良されているそうです。

  • 大分の「宗麟かぼちゃ」は、2007年に復活したものです。1542年に大友宗麟に献上されたかぼちゃの種は、博多で作り続けていました。これが大分に里帰りして復活栽培がスタートしました。

  • 「蔵王かぼちゃ」は「まさかりかぼちゃ」とも呼ばれています。名前の通り、まさかりやなたを用いなければ割れないほどかたい。日持ちするので寒い時期の食べものとして重宝されました。一説によると、この「蔵王かぼちゃ」が会津に伝わって「赤皮甘栗かぼちゃ」になり、今、「栗かぼちゃ」といわれているものの元祖と考えられているそうです。加賀の「赤皮栗かぼちゃ」もその一つです。赤皮以外の栗かぼちゃもいろいろと登場しました。飛騨の「宿儺かぼちゃ」は白皮の栗かぼちゃです。伝統野菜には物語があり、とても面白いので、ぜひみなさんにもいろいろな伝統野菜を知っていただきたいと思います。
◇「かぼちゃ」の写真
黒皮(石川)
黒皮(宮崎)
赤皮甘栗(石川)
内藤(東京)
鹿ヶ谷(京都)
宿儺(岐阜)
 

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