■2022年10月16日 第7回 かき・りんご 〜 勉強品目「かき」 (株)果菜里屋 高橋芳江氏、伝統野菜プロジェクト 領家彰子氏

◇「かき」について

  • 当日の勉強品目は以下の通り。
    「次郎(愛知)」、「太秋(岐阜)」、「輝太郎(鳥取)」、「甲州百目(山梨)」、「紀の川柿(和歌山)」、「筆柿(愛知)」、「一町田中(山梨)」
    その他、かきの葉、干しがき「あんぽ柿」、「ベビーパーシモン(岐阜)」も。
(株)果菜里屋 高橋芳江氏

◇「伝統野菜のかき」について

 [伝統野菜プロジェクト 領家彰子氏より]

  • かきの原産地は中国の中南部といわれています。中国、朝鮮半島、日本に古くからありましたが、中国と韓国には渋がきしかありません。現在、日本で栽培されている品種はほとんどが中国大陸から導入されたものです。温暖な気候がかきの栽培に適していたため、木の上で渋がきが甘くなることが発見され、甘がきができました。そこで、甘がきは日本が原産ではないかといわれています。

  • 明治時代、かきは日本から海外に出ましたが、食べ方は伝わらず、渋いので定着しなかったようです。
伝統野菜プロジェクト 領家彰子氏
  • かきは庭先に植栽され、長く愛されてきた果物です。特に冬場の糖分の補給源として、古くから干しがきが利用されてきました。文献によると、平安時代からといいます。干しがきを置いておくとできる白い結晶はブドウ糖と果糖で、その白い粉だけを集めて利用したともいわれています。

  • 「パーシモン」はゴルフクラブに利用されますし、柿の葉寿司には葉を使います。このほか家具に使われたり、柿渋を塗料や民間薬に利用するなど、かきは多面的に活用されてきました。

  • 甘がきについてご紹介します。「富有」はご説明がありましたので省略します。「松本早生」は、「富有」の枝替わりで、早生を求める過程で出てきたものです。

  • 「次郎」は江戸時代に静岡県で発見され、長く栽培されています。デパートなどで販売される「浜北次郎」は、贈答品として現在も生きている品種です。

  • 「西村早生」は、「富有」と「赤柿」の自然交雑によるものといわれています。

  • 「筆柿」は筆のような形をしていることから、この名前がつきました。

  • 「禅寺丸」は、鎌倉時代に、神奈川県の王禅寺を改築する際にかきが発見され、それが甘くておいしい、と。小さいかきで、黒いシミが出ることがありますが、江戸時代に広がり、明治から大正にかけて非常に多く栽培されました。次第に大きなものや品質のいいものが出てきて、かきの地位が変わってしまいました。昭和25年くらいまでは神奈川や東京で相当広く栽培されていたそうですが、宅地造成などが進み、現在はあまり残っていません。

  • 次に、渋がきについて。中心的な存在は「平核無」です。新潟が発祥で、「八珍」などの名前があります。育てられた地域によっていろいろと発展し、和歌山では「紀の川柿」、佐渡では「おけさ柿」と呼ばれています。庄内では、山形県の伝統種として今でも盛んに栽培されています。

  • 「堂上蜂屋」は、干しがき専用。昔から、殿様や皇室への献上品でした。これを差し出して租税だったお米が免除され、生き延びてきたんですね。「甲州百目」や「富士」など、いろいろな名前があります。

  • 「会津身不知(みしらず)柿」は、さわしがきとして出荷。会津の伝統野菜に認定されています。

  • 「愛宕」は、愛媛県のもの。脱渋をして出しますが、難しいようで、戻ることもあると聞いています。愛媛の方にはなじみがあるかきだそうです。

  • 「西条」は広島原産。山陰地方で栽培され、島根県では干しがきとして愛される伝統野菜です。

  • 「禅寺丸」見学のお話です。小田急線の「柿生」には、「禅寺丸」という日本最古の甘がきとその碑があり、「禅寺丸まつり」も行われています。王禅寺には樹齢450年の古木、鶴川の東光院というお寺や、そのそばのお宅にも樹齢350〜370年といわれる古木があります。毎年しっかり手入れされていて、愛されていることを感じました。近くにはまだかき畑があり、多少荒れてはいましたが、びっしりとかきがなっていました。今年の「禅寺丸まつり」は3年ぶりの開催で、みなさん楽しみにしていたようです。10時開始でしたが、8時半から行列ができ、午後にはかきが売り切れていました。昔の木なので、高いところに生り、収穫が困難で市場には出回りません。産直では買えるそうです。この時期になると、地元のみなさんは「禅寺丸」を思い出すようで、売れる、と聞きました。

◇「かき」の写真
富有
(山梨)
次郎
(愛知)
太秋
(岐阜)
輝太郎
(鳥取)
筆柿
(愛知)
平核無
(和歌山)
刀根早生
(奈良)
庄内柿
(山形)
紀ノ川柿
(和歌山)
甲州百目
(山梨)
禅寺丸
(東京)
あんぽ柿
(山梨)
ベビーパーシモン
(岐阜)
ベビーパーシモン
(岐阜)
柿の葉
(福島)
 

【八百屋塾2022 第7回】 挨拶講演「かきの甘渋性および品種育成について」勉強品目「かき」産地リモート中継食べくらべ