Q:外食のフライドポテトは、ほぼすべてが外国産(アメリカ産)です。今後、その状況はどうなるのでしょうか。政府は育種に力を入れるつもりなのか、もうその分野は捨ててしまったのか…。
A:アメリカのフレンチフライは「ラセットバーバンク」という品種で、砂漠のようなところにかん水施設を作り、大規模に作られています。非常に大きくなるので歩留まりがいいのですが、それを日本に持ち込んでも同じいもは作れません。「ホッカイコガネ」を上手に作れば大きくなり、フレンチフライにも使えますが、現時点で「ラセットバーバンク」に勝てるような品種が日本にないのは事実です。育種では、フレンチフライだけに力を入れるわけにはいかないのですが、あきらめたわけではありません。
Q:品種改良について質問です。遺伝子組み換えやゲノム編集が話題になっていますが、「ピルカ」などの抵抗性がついているものは遺伝子組み換えでできたものなのでしょうか?
A:遺伝子組み換えではなく、オーソドックスな育種の手法で改良された品種です。遺伝子組み換えもこれまでの手法も、遺伝子の交雑という意味では同じですが、現時点で、遺伝子組み換えじゃがいもは日本にはありません。ゲノム編集を試験しているじゃがいもはあります。ちなみに、ゲノム編集と遺伝子組み換えの違いは、ゲノム編集はもともとある遺伝子を改変すること、遺伝子組み換えは、もともとなかった遺伝子を外から持ち込むことで、今、日本にあるゲノム編集で作られたものは、トマトと鯛だけだと思います。じゃがいもの場合、ソラニンやチャコニンがない品種をゲノム編集で作ろうとしています。ほかの性質は何も変えないで、グリコアルカロイドを作る遺伝子を壊すという発想です。
Q:「さやか」を納めたときに、かたくておいしくないといわれたことがあります。
A:産地や作り方にもよりますが、「さやか」は「男爵」と比べていもくささがありません。私の感覚では、味としてはおとなしい。日本人は「男爵」に慣れていて、あの「いも臭さ」がスタンダードになっているので、「男爵」のイメージで食べると味がないといわれるのかもしれません。
Q:じゃがいもの貯蔵は何℃が適温でしょうか。テレビで、16カ月くらい寝かせて熟成すると甘さが増す、と言っていました。貯蔵すれば、輸入に頼っていたものを国産品でまかなう可能性がある、という話もあります。一方で凍害のお話もありました。その点はどうなのでしょうか?
A:通常3〜4℃、凍らない程度の温度でかなり長持ちしますが、糖分が増え、ポテトチップスにすると茶色くなってしまいます。このため、ポテトチップス用では10℃ぐらいの温度で保存するのですが、どうしても芽が伸びてしまいます。凍害は、大きな倉庫で、全体を下げようとして部分的に下がりすぎてしまうところに出ます。貯蔵には繊細なオペレーションが必要です。北海道には、3年間寝かせた「インカのめざめ」を出す産地もあります。「インカのめざめ」は低温で貯蔵すると糖分の一種である「しょ糖」が増える特異な品種なので、1〜2℃で長期間貯蔵するとメロン並みに甘くなります。
Q:「シャイニールビー」などが出てきて、「アンデスレッド」などは消えていくのですか?
A:一定のニーズがあれば残ります。ただ、新しい品種のほうが栽培しやすいとか加工適正があるといったメリットがあるので自然に変わっていくだろうと思います。
Q:「デストロイヤー」は、ずいぶん雰囲気が変わってしまった気がするのですが。
A:じゃがいもは、遺伝子構成が複雑な4倍体の作物なので、何代にもわたって種芋を栽培・保管・増殖を繰り返していると、変わったり、消えてしまうものがあります。できるだけそうならないようにしてはいますが、原因はよくわかっていません。
Q:中心空洞の原因は何でしょうか?
A:品種に適した栽培がされていなかったこと。たとえば肥料のやりすぎ、気温の高すぎなど、栽培面での微妙な不適合によって起こります。起こりやすい品種とそうではない品種があります。
Q:今日は、時期的に北海道の新じゃがの季節なので、貯蔵品ではないラインナップになりました。1〜2月など、貯蔵品が出てくる季節に、塾生のみなさんそれぞれで食べてみてください。農家さんによっては氷温貯蔵をして甘くしたじゃがいもを出すところもあります。
A:おっしゃる通り、昔から、冬を越すと甘くなるといわれています。
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