Q:埼玉県が梨の栽培に力を入れ始めた理由を教えてください。
A:梨の産地は利根川の氾濫域、低地で水田もあります。戦後のカスリン台風と、その前、大正か明治に利根川が氾濫したことがあり、水田は水に浸かってしまいましたが、梨は上になるので収穫でき、梨を作っていた人は食いつなげました。梨を作る人は増えましたが、問題は、水田との複合経営で、梨は副業ということ。平均耕作面積が少なく、後継者が育ちません。対極にあるのが千葉県です。経営規模が大きく、子供が後継者として帰ってくる。今、圧倒的に千葉県が日本一で、元気な産地です。
Q:梨の貯蔵適温を教えてください。
A:長く持たせたければ貯蔵適温は2℃。「彩玉」も、2℃で11月ぐらいまでは大丈夫です。また、ポータブル型の脱臭装置があるといい。家庭用の脱臭装置の改良型で、細菌や花粉を分解できるものは、エチレンも分解できます。庫内に溜まったエチレンを分解すると、日もちが伸びますし、冷蔵庫臭も消してくれます。ストックヤードがある方は検討されるといいでしょう。
Q:1-MCPによって梨のおいしさに影響はないのですか?
A:江刺のリンゴに関して、貯蔵物は完熟時の匂いがやや足りない、という評価はあるそうです。ただ、それよりも、店もちせず、ぼけて商品ロスになるほうが問題ですし、パリパリ感を保つ点も評価されていると聞いています。梨についてですが、細胞は代謝しており、次の細胞に入れ替わった時にまた成熟が始まります。成熟を止めたままにするというよりは遅らせるイメージで、日もち性が2倍になる程度。リンゴはCA貯蔵と組み合わせるのでよく効くようですが、梨の場合は5日のものが10日に、10日のものが20日になるという感じです。
Q:梨の食べごろはどのように判断するのですか?
A:品種、どの色で収穫するか、どこに置いておくかにもよります。「幸水」は冷蔵性が低く、冷蔵庫に入れておいても2週間ぐらいで食べられなくなります。「彩玉」は乾燥しないようにキッチンペーパーでくるんで保存すれば11月ぐらいまで変わりません。今日の「秋麗」はまだ早い。「あきづき」は全然まだ。市場の人はしっかりと勉強していただきたいし、みなさんも、取引している選果場があれば、意見すべきだと思います。とにかく日もちするもの、1週間もつもの、という風潮があり、農家さんはそれに合わせています。消費者も生産者を鍛えていただきたいですね。
Q:日本の果物は高級化して、家庭で気軽に食べられない価格になり、果物離れがすすむのでは?
A:どこの誰に売るのかという話にもつながります。市場向けのサイズを市場に持っていけばいいと思います。
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