■2017年12月 千葉県農林総合研究センター 鈴木健司氏
千葉県農林総合研究センター
鈴木健司氏

 

 千葉県は、温暖な気候のもと、火山灰土の北総台地をはじめ各地の特長を生かして、ネギ、サツマイモ、トマト、梨、キャベツ、ホウレンソウなど多様な園芸品目を生産しており、東京都中央卸売市場へも毎年、大量の青果物を出荷するトップクラスの産地となっています。千葉県農林総合研究センターでは、これらの産地における農産物の安定した生産や品質の向上をサポートし、また消費者の方々に安全で安心できる農産物が提供できるように新品種育成や新たな技術開発に取り組んでいます。

 八百屋さんにとどまらず,流通・販売関係者が加わり、青果物についての歴史、産地の思いやストーリー、食べ方、栄養など様々な情報を熱心に勉強されている八百屋塾の皆さんの活動は、生産地にとっても頼もしい存在です。

 健康意識の向上で野菜が注目されていますが、偏らずにいろいろな野菜や食材を日常的に食べることが大切だと思います。今回、サトイモのテーマで八百屋塾に参加させていただきました。サトイモは和食の食材として日本人が古くから利用してきたものですが、料理に一手間かかるため、産地から消費者の方々への橋渡しがより求められる品目の一つでもあると思います。そんな中で、消費者と直に接する八百屋さん方の役割に大きく期待しています。

 みなさまのますますのご発展を祈念しております。

鈴木健司氏の講演を見るにはココをクリックしてください
【2017年12月10日 第9回 八百屋塾】講演「さといも」について 千葉県農林総合研究センター 鈴木健司氏

■2017年10月 ファーム700農園主 岩瀬登志男氏
ファーム700農園主
岩瀬登志男氏

 

 埼玉県ときがわ町にある標高700メートルの山で暮らし、「ファーム700」という農園を経営しています。元は花屋でしたので、クリスマスローズなどの栽培を楽しみつつ、「のらぼう菜」などの野菜、ワラビ、コゴミといった山菜、マイタケを中心に、クリタケ、ヒラタケ、シイタケなどのきのこを栽培しています。

 きのこはすべて原木栽培です。菌床との一番の違いは香りで、次は食感です。とれたての原木マイタケを自宅にあるいろりで焼いて塩だけで食べると、本当のマイタケの香りが楽しめます。とてもおいしいので、大勢の方に食べていただきたいというのが私の願いなのですが、今、流通しているきのこのほとんどが菌床で、若い人の中には原木栽培のきのこを食べたことがない、という方も多いようです。八百屋さんには、ぜひ、原木栽培のきのこのおいしさをお客さまに伝えていただきたいと思います。

 私は60歳でリタイアしてからときがわ町に移り住み、マイタケの栽培を始めたので、自然環境の中で年に1回しか栽培していません。地域でも高齢化が進んでおり、小規模なところがほとんどです。設備を作り温度管理をすれば通年栽培も可能で、若い人でもちゃんと生活できるはずです。余った土地を活用して、ときがわ町できのこを栽培してみよう、という方が増えてくれると嬉しいですね。そして、いつか、ときがわ町の原木マイタケを市場に流通したい、というのが私の夢です。

岩瀬登志男氏の講演を見るにはココをクリックしてください
【2017年10月15日 第7回 八百屋塾】講演「きのこ」について ファーム700農園主 岩瀬登志男氏

■2017年9月 (株)柳川採種研究会 盛岡研究農場 専務取締役 松川素彦氏
(株)柳川採種研究会
盛岡研究農場 専務取締役
松川素彦氏

 

 私は日本中の農家にタネを届けるために、岩手県滝沢市の農場でごぼうの栽培をしています。通常のごぼうより短い「てがる」や早生タイプの「常豊(つねゆたか)」など新しい品種の開発にも取り組んでおり、冬場は全国各地の産地に出かけ、ごぼうの栽培指導をすることもあります。

 今回、八百屋塾でごぼうについての講演をさせていただきましたが、みなさんが非常に熱心で驚きました。私は以前から、野菜を正しく評価してくれるところは八百屋さん以外にない、と思っています。ごぼうは中央にスが入るものですし、泥がついていたほうが長持ちします。食感もカリカリと音がするくらいかたいのがおいしいのですが、今はそうでないごぼうが好まれるようになっています。正しいものは何なのか、われわれも八百屋さんも、きちんと伝える必要があると思います。また、八百屋さんが「いらっしゃいませ」と対面販売をしている姿は、地域を守るためにもいつまでも残していただきたい。これからもさらに勉強して、元気な八百屋さんになってください。

 私から八百屋さんへのリクエストをひとつ言わせてもらうと、店頭ではたいてい「ごぼう ○○円」と書いて売っていると思います。トマトを「桃太郎」と書いて売るように、できれば「柳川理想」など、品種名を書いていただけるとありがたいです。

松川素彦氏の講演を見るにはココをクリックしてください
【2017年9月10日 第6回 八百屋塾】講演「ごぼう栽培の歴史及び品種・作型の分化・需要動向について」 (株)柳川採種研究会 盛岡研究農場 専務取締役 松川素彦氏

■2017年8月 (株)新宿高野 フーズ営業部 販売企画特命業務担当ディレクター 蚊爪(かづめ)喜三男氏、(株)新宿高野 フーズ営業部 販売企画課 広報マーケティング担当 フルーツコーディネーター マネージャー 久保直子氏

(株)新宿高野 フーズ営業部
販売企画特命業務担当ディレクター
蚊爪喜三男氏

(株)新宿高野 フーズ営業部
販売企画課 広報マーケティング担当
フルーツコーディネーター
マネージャー
久保直子氏

 

 

 かつて、みかんやりんごが飛ぶように売れた時代もありましたが、ここ数十年はなかなか購入に結びつきません。どうやったらもっと食べてもらえるか…。時代はモノ消費からコト消費へ変わってきた、といわれます。私たちも、フルーツを店頭に並べておく「モノ」ではなく、フルーツで得られる体験に価値を見出す「コト」を売るようにしています。

 まず、果物の魅力をお客さまにわかりやすくお伝えするため、3年ほど前から、毎月、情報誌を発刊しています。さらに、果物に関する各種カルチャー教室や、新宿高野の専門講師が果物のカッティングの仕方を教えるフルーツカット教室、「もも祭り」のようにひとつの果物をテーマにしたイベントなども不定期で開催し、おかげさまで来年の予定の問合せが入るほど、人気になっています。

 こうしたことを通して感じたのは、わかりやすく具体的に食べ方を提案しないといけない、ということです。旬、食べ頃、切り方など、売る側や産地にはごくあたりまえのことでも、お客さまが知らないことがたくさんあります。みなさんも、あたりまえのことをしっかりお客さまに伝えていただきたい、と思います。

(株)新宿高野 蚊爪(かづめ)喜三男氏、久保直子氏の講演を見るにはココをクリックしてください
【2017年8月20日 第5回 八百屋塾】講演「真夏の果実」 (株)新宿高野 フーズ営業部 販売企画特命業務担当ディレクター 蚊爪喜三男氏、(株)新宿高野 フーズ営業部 販売企画課 広報マーケティング担当 フルーツコーディネーター マネージャー 久保直子氏

■2017年7月 とうふ工房わたなべ 渡邊一美氏
とうふ工房わたなべ
渡邊一美氏

 

 7月の猛暑日、八百屋塾のみなさんは埼玉小川町とときがわ町で、多くの農家さんの強い思いを感じたに違いありません。化学肥料や化学薬品を使わないで自然の力(動植物や微生物)を巧みに利用して、100年先でも続けることのできる農業に取り組んでいる風の丘ファームの田下隆一さん、いままで農業経験のない若者たちが有機農業に取り組み、気の合う仲間と運営している「ときのこや」のみなさん、埼玉の伝統野菜「青なす」を台木に接ぎ木することによって、一本の木から45個の青なすを収穫する市川金雄さん、炎天下にも関わらず畑は農家の舞台でした。

 「物を売るよりことを売れ」と言われて久しく、品物を並べ値段をつければ売れる時代は終わりました。農家さんがどんな考えで有機農業に取り組んでいるのか、一粒一粒種をまき、野菜を育てているのか、箱入り娘のような野菜を収穫してお客さまへお届けするのか、農家さんの顔や人柄まで、しっかりお客さまへ伝えていただきたいと思います。

埼玉、小川町・ときがわ町の有機農業産地視察の内容を見るにはココをクリックしてください
【2017年7月9日 第4回 八百屋塾】有機農業の産地視察 in 埼玉

■2017年6月 農林水産省 生産局 農業環境対策課 課長補佐 古澤武志氏
農林水産省 生産局
農業環境対策課 課長補佐
古澤武志氏

 

 高温多湿な日本では、農作物への病気や害虫の被害、雑草の繁茂にも悩まされます。

 ところが、有機農業を含めた環境保全型農業に取り組む生産者は、環境への負荷を減らすため、化学肥料や化学合成農薬の使用を減らす、あるいは全く使用せずに、高い技術力や涙ぐましい努力によってこれらの課題を克服しています。

 本日の八百屋塾に参加されたみなさまからは、有機農業や有機JAS制度に関する多くの質問が寄せられ、みなさんがこれらについて理解を深め、消費者に生産者の取組など正確な情報を提供したいという熱い思いが伝わってきました。その熱い思いを、私どもは、積極的に応援したいと思います。

 本日のように、有機農業をはじめとする環境保全型農業について勉強したいというリクエストがありましたら、どこへでも説明に伺いますので、お気軽にお申しつけください。

古澤武志氏の講演を見るにはココをクリックしてください
【2017年6月11日 第3回 八百屋塾】講演「環境保全型農業の推進について」 農林水産省 生産局 農業環境対策課 課長補佐 古澤武志氏

■2017年5月 農研機構 野菜花き研究部門 野菜育種・ゲノム研究領域 ウリ科・イチゴユニット 杉山充啓氏
農研機構 野菜花き研究部門
野菜育種・ゲノム研究領域
ウリ科・イチゴユニット
杉山充啓氏

 

 私は農研機構の野菜花き研究部門で、メロン、ウリ、キュウリなどの育種や、さまざまな研究を行っています。

 メロンの育種は、おいしさが第一で、見た目や、生産者にとっての作りやすさも大事なので、そのあたりを念頭において育種をしています。最近は、病害抵抗性も注目されています。メロンには品種がたくさんあるので、八百屋さん、果物屋さんは、個性のある品種を取り揃えて販売すると、他店との差別化にもなるのではないでしょうか。

 キュウリは、メロンのような品種のバラエティはありません。生産の現場では、病気に強い品種に変えていたり、じつはメロンより品種の交代が早いくらいなのですが、キュウリはキュウリとして売られるのが普通で、品種名で販売されることはほぼないといっていいでしょう。かつて、キュウリは日本で一番多く作られている野菜でした。漬物需要が減り、現在は3位になっていますが、それでも日本人にとって大切な野菜であることは間違いありません。八百屋さんとしては、メロンのように品種の個性をアピールするのは難しいかもしれませんが、旬、食べ方などの魅力を伝えて、大いに売っていただきたいと思います。

 今回、八百屋塾で講師をして、一生懸命メモをとったり、熱心に勉強する八百屋さんの姿が印象的でした。八百屋さんは対面販売ができることが何より有利だと思います。ぜひ、野菜や果物のいいところを消費者にわかりやすく説明してあげてください。

杉山充啓氏の講演を見るにはココをクリックしてください
【2017年5月21日 第2回 八百屋塾】講演「メロン」について 農研機構 野菜花き研究部門 野菜育種・ゲノム研究領域 ウリ科・イチゴユニット 杉山充啓氏

■2017年4月 群馬県地域興しマイスター 担い手支援スペシャリスト シニア野菜ソムリエ  田村善男氏
群馬県地域興しマイスター
担い手支援スペシャリスト
シニア野菜ソムリエ
田村善男氏

 

 私は46年間、卸売市場で野菜に携わる仕事をしてきました。現在は、できるだけわかりやすく野菜の知識を伝えようと、さまざまな活動をしています。

 都内の八百屋さんは、「地産地消」、「伝統野菜」という観点から、ぜひ東京産の野菜に関心を持ってください。飲食店で東京産の野菜を使っているところもあるので、そういうお店に食べに行けば、「自分の店でも何かできないかな」と考えるきっかけになるかもしれません。どうしたら自分の店で売れるか。自分だけで解決するのは無理でも、八百屋塾の仲間にはさまざまな情報を持っている方がいますから、いろいろなものを結びつけたらいい、と思います。

 農業新聞や食のイベントなど、周囲の情報に常にアンテナを立てることも大切です。よく流通業は変化適応業、対応業といわれます。変化に対応できるかどうかが、自分たちが生き残れる道になります。世の中は常に変化しています。あまり先走り過ぎると難しいですが、半歩先を読み、八百屋塾で学んだことを消費者や飲食店などに伝えて、元気な業態として残れるように努力してください。

田村善男氏の講演を見るにはココをクリックしてください
【2017年4月9日 第1回 八百屋塾】記念講演「八百屋のありかた」 群馬県地域興しマイスター 担い手支援スペシャリスト シニア野菜ソムリエ 田村善男氏

■2017年3月 アル・ケッチァーノ シェフ 奥田政行氏
アル・ケッチァーノ シェフ
奥田政行氏

 

 山形県の鶴岡市で、「アル・ケッチァーノ」という野菜をふんだんに使ったイタリア料理のお店を開いています。

 私はふだんから八百屋さんや生産者さんとおつきあいするにあたり、「人」を重視しています。この人はいろいろな知識を与えてくれるな、この人から野菜を仕入れれば間違いないな、と思えることです。八百屋さんは野菜の通訳人、翻訳家です。野菜の立場になって考え、野菜の声をよく聞いて、お客さまに翻訳してあげてください。

 今日、みなさんに、「にんじんの3分50秒料理」をご紹介しました。にんじんの味をストレートに味わうための調理法です。ぜひ店頭でやってみてください。「野菜の声を聞きながら料理してるんだよ!」と、説明しながら焼いて、お客さまに食べてもらえば、きっと「この人からにんじんを買いたい」と思ってくれます。「にんじんはこうやるとおいしくなるんだって!」と言うだけでは、単なる知識の受け売りになってしまいます。実際に自分でやってからお客さまに話すと、言葉に重みが出ます。

 両面焼くのに7分。その間に、何かほかの野菜について語ってもいいでしょう。そうして、「儲ける」のではなく「儲かる」八百屋さんになってください。

奥田政行氏の講演&料理のデモンストレーションのようすはココをクリックしてください
【2017年3月12日 第12回 八百屋塾】特別講演「野菜の本能をよびおこす」「料理とは何か」 アル・ケッチァーノ シェフ 奥田政行氏

■2017年2月 茨城県つくば市「むつみ農園」 酒井成人氏
むつみ農園
酒井成人氏

 

 本日は、「むつみ農園」にお越しくださり、ありがとうございました。50人以上の方々に、オーナー制度で育てているハウスのいちごを見ていただいた後、7種類のいちごを食べくらべてもらいました。今回のいちごはすべて朝摘みです。食べくらべの際に人気投票もしてもらいました。それをみると、完熟しても酸味が残る、糖酸バランスのとれたいちごが高評価でした。さすがに八百屋さんたちは食べ慣れているんですね。

 私のところは市場出荷していません。基本的にお客さまに直接お届けするので、できるだけ熟度を上げて収穫しています。

 今の時期、週に一度、新橋で直売しています。お客さまに試食していただくことで、反応がわかるし、作ったものがおいしいと言われるのが励みになります。八百屋さんも、自分が選んだものがおいしいと評価されると、嬉しいのではないでしょうか。これからも、おいしいものをお客さまに届けていただきたいと思います。

酒井成人氏のいちご農園見学のようすはココをクリックしてください
【2017年2月19日 第11回 八百屋塾】産地視察 in 茨城「むつみ農園」の見学

■2017年2月 茨城県結城市 (有)山下商事 代表取締役 山下英一氏
(有)山下商事 代表取締役
山下英一氏

 

 茨城県結城市で白菜を栽培しています。40町の畑でほぼ周年、日々2000ケースほどの白菜を出荷しており、配送などもすべて自社で行っています。霜の降りる時期に白菜の頭を縛ったり、収穫するのは全部手作業です。

 昔は「ごま」といって白菜に黒い斑点があるのはあたりまえでした。おいしさが凝縮されると出るもので、むしろいい白菜の証でした。でも、今は見た目重視で、消費者も漬け物屋さんもごまの出た白菜はほしがりません。立場によって「いい白菜」の意味合いが違ってしまったのはやや残念です。

 家庭で料理をしなくなったといわれますが、どんな形であれ、とにかく野菜を食べてもらえればいい、と思っています。ただ、生産者がいくら一生懸命作っても、八百屋さんにたくさん売ってもらわないと、農家も困ってしまいます。農家と八百屋さんがともに成長できるよう、いっしょにがんばりましょう。

山下氏の白菜圃場見学のようすはココをクリックしてください
【2017年2月19日 第11回 八百屋塾】産地視察 in 茨城「白菜圃場」の見学

■2017年1月 神奈川県農業技術センター 生産技術部 北浦健生氏
神奈川県農業技術センター
生産技術部
北浦健生氏

 

 神奈川県農業技術センターでは、地産地消の推進に向けた特産品の開発を、栽培技術面と新品種の育成の2方向から行っています。野菜の品種は、種苗会社がしのぎを削って育種を行っています。そこにわれわれのような地方の試験場が参加することを不思議に思われるかもしれません。それは、特産品という点と、神奈川県の生産現場の状況の2点に理由があります。近年、新鮮で安全安心な農産物の提供という点で、直売が伸びてきていますが、それに加えて特徴ある農産物の開発が求められるようになりました。都市化が進んだとはいえ、県内には、在来の野菜があり、これらの改良が大きな課題です。三浦半島を除けば「大きな」といえる産地がない当県では、特産品の改良を種苗会社に期待することは難しく、われわれ自身で取り組むことにしました。

 野菜に関して、種々勉強を進めておられる八百屋塾のみなさまはわれわれにとって非常に頼もしく、今後地域の取組みについても知識を深めて、ますます発展されることを願っています。

北浦健生氏の講演を見るにはココをクリックしてください
【2017年1月15日 第10回 八百屋塾】講演「だいこん」について 北浦健生氏