■2021年11月21日 リモート八百屋塾 白菜〜 勉強品目「白菜」 東京青果(株) 野菜第1事業部 島根隆宏氏
  • これまでは6玉のやや小さい白菜の出荷が多かったのですが、10〜11月の天候が非常に良かったため、ここにきて玉伸びと締まりが良くなって、作柄は昨年同様豊作傾向になっています。

  • 茨城県産は8月10日くらいにタネを播き、8月20〜25日くらいに畑に定植をします。年明け2月くらいまで出荷がありますが、最終の定植は9月25日前後です。

  • 品種は黄芯系のものが主力です。白、緑、黄色のコントラストがきれいに入っているものがいいのではないかと思います。年明けまで出荷されます。年内は「秋めき」、「秋理想」あたりが主力で、年明けになると「CR初笑」になります。
東京青果(株) 野菜第1事業部 島根隆宏氏
  • 11月20日くらいから、12月15〜20日くらいになると、茨城の畑では霜よけ対策として白菜の頭縛り作業が始まります。畑で1つずつ縛っていくのですが、非常に労力がかかるので、海外の技能実習生の方が中心となって行っています。

  • オレンジ白菜は、長野と茨城が主力。品種はタキイ種苗さんの「オレンジクイーン」。繊維質が高い分、食感がよく、漬けものや炒め物でもいいのですが、生のままおいしく食べられます。彩りもいいので、量販店でも差別化のため売り場に並ぶのを見かけるようになりました。

  • 紫白菜も長野や茨城で作られていますが、用途が限られているので、生産する農家さんも限定されており、市場にはそれほど入荷してきません。彩り、アクセントとして飲食店関係の利用があるのだと思います。

  • 「タイニーシュシュ」は、最近仕上がって商品化されたものです。限定的な商材ですが、小型の食べきりサイズで使いやすく、単身世帯や、家族構成が少ない方たちに重宝されるのではないかと思います。食味はやわらかく、ここ最近、取り扱いが多くなっています。

  • 「下山千歳白菜」は今日初めて見ました。東京の世田谷で作られてきたようで、今日のものは練馬から届きました。白菜は地域に根づいた品種が数多くあります。

  • 「広島菜」は、広島県内で作られており、大田市場では見かけない貴重なものです。弊社の取り扱いもほとんどないのですが、ほぼ漬けもの用だと聞いています。福岡の高菜、長野の野沢菜、広島の広島菜が日本三大漬け菜とされ、漬けものにすると非常に味がいいといわれています。

  • 松島白菜は、仙台白菜とも呼ばれています。弊社の取り扱いは11〜12月中旬まで、数量的にも限られています。品種名は「松島純二号」、1920年に作られた日本の中では最も古い品種になると思います。黄芯と比べると巻きの部分が若干ゆるいのですが、非常にやわらかいので、漬けものにしたときの漬かりがよく、歯触りもいい。ここから派生して、「新理想白菜」ができました。松島同様、やわらかい白菜です。30年くらい前に作られたものですが、今も茨城で作っている農家さんがいますので、お声がけいただければご案内できます。

  • これからは気温も下がってきて、白菜のシーズンになります。豊作基調にあるので、ぜひ存分にお取り扱いいただければ、と思います。
◇質疑応答より

    Q:白菜は冬場は売れますが、夏場は意外とえぐかったりして売るのに苦労しています。夏場においしい白菜の品種やおいしい食べ方があれば教えてください。
    A:夏場は長野県を主力とした産地構成です。作りにくい時期に作っているので、えぐみがあったり、かたいといわれることもありますが、木曽の「御岳白菜」は、夏場に流通するものの中では、比較的やわらかく、おすすめです。7〜9月上中旬が主力時期で、関東の市場では東京青果にしか入荷しませんので付加価値もあると思います。食べ方ですが、地元の方は、みそ汁や、サラダで食べるとおいしい、とおっしゃっていました。また、漬かりがいいので漬けもので食べてもらえるとありがたい、というのが生産者の声です。

◇白菜についての補足説明 杉本晃章
  • 八百屋塾では2018年に茨城の山下農園に視察に行きました。日量2000ケースと、大規模にやっていて、うち1000ケースはキムチ屋さんと契約して、比較的安価な決まった値段で卸しているそうです。あとは青果市場へ分散して出荷していました。東南アジアからの研修生を10人くらい使って、全部で12〜13日でやっていて、肥料から段ボールからを含めると、生産原価530円はかかるそうです。それでも8〜10年に1回の台風が来ると、高騰するので潤うみたいです。みなさん、値段のことも知っておくといいと思います。

  • 夏の白菜については、一部にはいい品種もあるようですが、ここ4〜5年、夏の白菜がとけなくなったと感じています。以前は夏の白菜は東京に着くと、とけた品物が多くて難儀したものです。おそらく品種を変えて、暑さに強いものを導入しているのでしょう。夏にもお客さまが「白菜の漬けものないの?」と言って来るのですが、私は、「夏の白菜はかたいのでありません」と言っています。やはり、白菜は旬の秋から冬にかけてが一番おいしい、と自分はかたく信じています。
◇「白菜」の写真
黄芯白菜
オレンジ白菜
紫白菜
タイニーシュシュ
広島菜
松島純二号
下山千歳白菜-1
下山千歳白菜-2
 

【八百屋塾2021 11月】 挨拶講演「白菜」について勉強品目「白菜」